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2006年4月 1日 (土)

この季節に思い出すこと②

塾を初めて間もない頃、塾に一人の男の子が入ってきました。ただ若さと、

子供好きだけで勉強を教えていた僕に、変化を与えるきっかけを作って

くれたのです。彼の名前はSちゃん。障害と共に歩いている子でした。

「小学校卒業までに筆算ができるようにしてほしい。」そう言う母親の依頼に

「簡単なことだろう」とタカをくくってしまい、受け入れたのでした。彼は純粋で

駆け引きのできない無垢な子でした。「時代劇の決めぜりふ」とその主題歌

をとても上手に歌い上げる子でもありました。

いつでも機嫌がいいわけでもなく、低学年の頃は発達が遅れていたのか、とりわけ

甘えん坊でした。「全く思い通りにならない」。子供を教えることの難しさを教えて

くれたのは彼でした。

発作を起こしたことも何度もありました。そんなときただ僕にできることは、彼に

危険がないようにすることと母親に連絡し、あとは見守るだけ。それに対して

Sちゃんのお母さんはてきぱきと彼を助け家に連れて帰るのでした。彼は僕に

無力さも教えてくれました。

ただ、そんなSちゃんでしたが、決して嫌いになることはありませんでした。

「確かに母親にはかなわない。でも僕は子供が好きだ。この仕事を選んだことは

決して間違いではなかった。」確信を与えてくれたのもSちゃんだったのです。


彼はやがて小学校を卒業し、たどたどしく筆算もできるようにもなっていました。

正解率はそれほど高くはありませんでしたが、とてもまじめで立派にやりこなそうと

していました。

あれから10年以上がたったつい先日、卒塾生が遊びに来てくれました。そして

Sちゃんの今を教えてくれたのです。

とてもりりしい青年になり、大型スーパーの食品倉庫で朝早くから遅くまで一生

懸命に働いているとのこと。「彼はとっても立派ですよ先生」卒塾生はそう教えて

くれました。「ああ、やっぱり彼はまじめで、無垢でそして一生懸命な青年になっ

ていたんだ!!」 近いうちにこっそり見に行こう。そう思っています。


ただ元気よく子供に勉強を教えていればいい。そんな僕のままだったら・・きっと今の僕

はいないでしょう。自分をかえりみて変えるきっかけを与えてくれたSちゃん。

【どんな親もその子を育てるのは一度だけ。だからこそ必死になってできることは何でも

してあげたいと思う。立派な大人になれるように・・・。】

塾で教えるとき、僕はそのことを忘れないようにしたいと思っています。親は後悔のない

子育てをしたいと思っています。「その一つとしてうちの塾を選んでくれたんだ。」

今2人の子を持つようになって僕も身にしみて感じています。

             もっともっと親の思いを反映した教育をしていきたい。

Sちゃんと過ごした6年間は僕の宝物です。

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